爲盛發心集 三巻

源平の合戦で名を馳せた熊谷、平山、津戸、甘粕という四人の武士がいた。熊谷、平山の二人は法然上人の弟子となり、一心に修行していたが、邪見不当の悪人、津戸三郎為盛は、熊谷たちの教化にも耳を貸さず、上人の房へ足を運ばなかった。それでも二人の熱心な教訓に負け、不審な点を上人に尋ねるべく、しぶしぶ御前に参上する。本作品の中心は以下繰り広げられる法然の説教にあるといってよい。法然の説教に感じた為盛はすぐに上人の弟子になり、罪障を懺悔した後、念仏を唱えて自害する。多くの人が見守る中、紫雲たなびき音楽が聞こえ、為盛は往生する。本文的には漢字片仮名交じりの天正写本(物語大成9に翻刻)に近い。(京都大学附属図書館創立百周年記念公開展示会図録より)